☆とてもロマンチックな星のひとりごと☆
プレ・エッセイ 伊藤敏博
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このページでは過去に音楽雑誌『GB』に連載していたエッセイを今改めて公開します。
早
いもので8月25日にデビュー一周年を迎える伊藤君。その記念すべき日に、新曲「秋終記」を発表。そしてしばらくぶりのGB登場。真っ黒に日焼けしてとても元気そう。なんでも、ヒマみつけては日光浴してたとか。
そんな彼が、今月からこのGB誌上にエッセイを届けてくれる事になった。発端は、地元北陸のイベンター、FOBが発行している機関誌に連載されてた彼のエッセイの評判を聞きつけたから。
「あんなんでいいんかな。ホントに僕のものでいいの?だれも読んでくれないのと違う?」
とGB連載決定に不安そうな伊藤君。でも、下手な風物詩を読むよりも、うんと心を打つ情景の数々、人間模様を描く彼の文章は、きっと誰の目にも生き生きと伝わるのではと思い、ここに連載プレ・エッセイをFOB誌から抜すい。秋からラジオのレギュラーの話、アルバム制作の話も聞かれるこのごろ。GBのレギュラーに彼が加わることを、心から歓迎!
階
段を上がって来る母ちゃんの足音が聞こえる。遠慮がちに。俺の部屋の戸を開ける。
「としひろ・・・・・」
眠たさにかすれた声で呼びかける。
「起きとる」
と答え、時計を見る、午前2時30分。(波は穏やかだろうか)長靴を履きながら海岸の方に耳を傾ける、優しい潮風、凪いでいるようだ。雨戸を開けるとまだ夜の盛り、空を仰ぐと夏の星座が降るように輝いてる。
船外機を担いで浜におりると親父はすでに舟を波打ち際までおろし、俺の来るのを待っていた。穏やかな海だ。一気に水面に滑り出て行く舟・・・・・。夏場だけ細々と差網漁をやっている親不知での俺の夏の生活の一場面。漁場まではまだ時間がかかる。舟の上で横になると、一層星の輝きが鮮明になって、世界が変わる・・・・・ひと眠り・・・・・<流れ星の物語の夢>
今夜のように夜空一面に、星々がその輝きを競いあっている夜にこそ、星の国では激しい戦争が絶え間なく続いているのです。ちょうど天の川を境にして北の国と南の国とがお月様の奪い合いをするための戦さです。
その夜も激しい戦さでした。そしていつものように、たくさんの犠牲者が両方の国から出ていました。彼らは力尽き夜空に浮かんでいることができなくなり、南の国の兵士は大西洋に北の国の兵士は太平洋にと、ぽとり、ぽとり、落ちていくのでした。
その様は地球上にいる人間達にとっても、とっても奇麗な流れ星となって映り、恋人同士にいたっては、恋の行方を占いでもするかのように楽しませてくれているのですが、実は、星の国の兵士達はみじめな姿だったのです。そして彼らは、星の国から汚れた地球の大気に一歩入った瞬間から、あの輝きを失ってしまい、あたかも燃え尽きてしまったかのように、私たち、人間は思っていますが、そうではないのです。
輝きを失った時から彼らはヒトデに変わってしまうのです。そして海に、ぽと、ぽとと降りそそぐのです。そして、海のヒトデは寂しく空を見あげ星の夜毎に涙しています。海の水がしょっぱいのは、その涙のせいなのかもしれません。子が漁師の親に聞きました。
「なんで、海の中にお星様がいるの?」
船外機が止まったところをみると漁場に到着したようです。
一、夜空に流れる川ひとつ。
海に流れる天の川、
深い深い 海の底、
流れ降ちた星ヒトデ
何万年もの昔から
星の夜には涙して
空に帰る日、待ちわびる。
二、今こそ流れろ天の川
海に流れろ天の川
暗い暗い海の夜
光り無くした星ヒトデ
待って待って待ちわびた
海に流れる天の川
伝って夜空に帰る日だ。
(FOB会報より)
次回をお楽しみに・・・